
そして、もちろんそのすべてが一枚板のテーブルに適した状態ではありません。 数少ない原木の中から最適に思える原木を探すために必要な能力が「目利き」です。 一枚板は原木を製材して作りだすわけですが、もちろん原木のままでは中身の状態を見ることはできません。
原木の主に外見に表れているさまざまなポイントによってどんな一枚板が採れるのか判断するのですから、より詳しい知識と経験が必要になります。
このように元々数が少ない状態の中から選んだ原木でも、実際に製材してみたところ一枚板には不向きな場合も往々にあります。 限られた材だけが一枚板になり、私たちの手元に届いていることが実感できますね。




製材が済んだ板は次に乾燥させます。 この工程、一枚板ができるまでのすべての工程で、最もと言って良いほど重要な工程となります。
原木には吸い上げられた水分が豊富に蓄えられており、未乾燥の材を「生材」と呼びます。 木材が含む水分量の目安となる含水率(※)を見ると、BRUNCHで取り扱っている広葉樹は生材の状態で平均70%前後の含水率となりますが、一方、針葉樹では300% 以上の含水率の木もあり、伐採すると水が溢れてくる木もあるそうです。

なお木材の含水率は水分の変化を捉えやすくするために、水分を一切含まない木材そのものの重量を基準にして算出しているために、100%を超える含水率になる場合も多々あります。 200gのウォールナットが乾燥して80gになった場合は200-80×100÷80=150%の含水率になります。

家具を製作したあとに割れや反りが表れてしまうと商品に不具合が生じてしまいますので、あらかじめしっかりと乾燥させ、最適な含水率まで下げた乾燥材を使用します。 (変形や割れが生じる原因は繊維飽和点と異方性の関係があり、含水率自体とは話が異なります)

この方法では空気にふれている表面から少しずつ乾燥していきますので、板と板を重ねてしまうと空気にふれる面が少なくなり乾燥が進みません。 また場所によって乾燥の進み具合に差が生じると割れや変形が起きてしまうためなるべく多くの面が空気にふれるように板と板の間に木の桟を挟み、隙間を作ります。

■乾燥は樹種によって変わる-BRUNCH で取り扱っている材の中ではブラックチェリーは比較的乾燥が早く、 同じ北米材でもウォールナットは中心部分の乾燥が遅く乾燥に時間がかかります。 また一枚板で見ると、楢材の特に板目は乾燥の際に割れが非常に起きやすい木材です。 乾燥の話とは少し逸れてしまいますが耳部分も腐りやすいため「一枚板」「耳付き」に限定すると入手が困難な材になります。


こうして天然乾燥により時間をかけて少しずつ含水率を下げていくのですが、天然乾燥のみでは平衡含水率の15% 前後までしか下げることができないため、続いて人工乾燥を行います。

高周波乾燥の場合は私たちの生活の中で言えば電子レンジのような仕組みで、内部から熱を加え、 外に水分を蒸発させていきます。これにより外部からも内部からも乾燥させることができ、均一な含水率を保つことができます。
人工乾燥の期間は天然乾燥の1 ~数年にたいして数週間の乾燥で済みます。 ではなぜ最初から人工乾燥を施さないかというと、急激な含水率の変化は、木に大きな負担がかかり 割れや変形の可能性を増幅させてしまうためです。 なので、まずはゆっくりと天然乾燥で含水率を下げ、そのあとに人工乾燥で 現在の住宅環境にあわせた含水率に下げていく必要があります。

ただ仕入れて、ただ製材し、ただ乾燥させる。それではいい板は出来上がりません。 自然が作りあげた美しい素材を、職人の手によって仕上げる。 もっと簡単で手早く出来る方法はいくらでもありますが、最高の状態の一枚板を作り上げるためには 途方もない時間と手間暇が必要です。そしてこの工程があるからこそ一枚板は魅力的なのだと思います。 内面から伝わる美しさ、それも一枚板の最大の魅力のひとつですのでぜひ一枚板が出来上がるまでの 背景を思い浮かべながら運命の一枚をお探し頂ければと思います。

一枚板とオーダーメイド家具の店